各社BIM推進に努めていますがいまいち前に進んでいる気がしません。情報化したはいいものの果たしてこれがBIMなのかと考えることはよくあると思います。
なんで今日の建築業界でデジタルトランスフォーメーションによるパラダイムシフトが起きないのか考えてみました。
この記事は一つの問題提起として受け取ってもらえると理解が深まると思います。
BIMに関する基礎知識を振り返る
建築業界で働いていると、【BIMとはBuilding Information Model(Modeling)である】という定型文をよく目にします。
一つ踏み込んで「Building Information Model(Modeling)」って何だろうって考えるとなかなか回答しにくいのではないでしょうか。
BIMで重要なのは情報の管理・活用である
建築業界全体として、BIMというキーワードが先行してしまって実態が見えてこない状況下にあると思います。
誤解を恐れず言語化すると次の通りです。
BIMとは建築(もしくは建築業界)に【新しい価値】を生み出すために、
建築のライフサイクルに関わる一連の出来事を情報として管理・活用することである。
建築のライフサイクルを情報化するということ
情報化するためには、建築のライフサイクル全般の中で今まで見てこなかった曖昧な部分を定量的に考える必要があります。
現場で調整していたおさまりや、運用段階になってから顕在化する問題などを計画の段階から考慮していかなければなりません。情報化する中であいまいさは許容されないからです。
情報化して問題が起きないようにすることで、手戻りや余計なコスト発生を未然に防ぎ、建築物の質の向上を目指します。
情報化の副産物は非常に多い
情報化することでソフトウェアや特殊技能などの制限なくアクセスすることが可能になします。建築物が作る膨大なデータを利用して新しい方向へ活かす仕組みが考えられ始めています。
IoT技術を用いたスマート建築は今後急速に伸びていきますし、建築物の工業化も加速度的に注目を集めています。
ではなぜ思うようにBIMの活用が進まないのでしょうか。
国内の建築業界のBIMに対する勘違い
BIMの統一的な手法を模索している段階にあるのが建築業界の現状です。
今日建築業界で得られたBIMの効果は生産活動の自動化にとどまっています。つまり、BIMによる新しい建築の価値はいまだ生み出されていません。
標準化やフロントローディングを進めても、ある段階のプロセスの効率化が達成されるだけで特に何も変わっていないのです。
BIMは道具の一つであって目的そのものではない
紙を切るためにハサミを手に取るように、道具を使うときは通常何かしら目的があります。
BIMやデジタル技術も道具の一つなので達成すべき目的が必要です。建築を情報化しても扱いやすくなるだけなのです。
日本国内で今使われているBIMの目的は何でしょうか。
国内BIM推進を建築生産者が主に進めていることの弊害
国内のBIM推進が思うように進まない状況は「建築の生産者しかBIMに興味を持っていない」という悲しい現実が理由の一つになると考えています。
建築のライフサイクルを考えると一番長く関係があるはずの建築主や運用する側の団体のが推進に参加していないので、目的なく建築の情報化を推進しているように感じます。
建築を情報化して管理したり活用できるようにしないと!
でも施主は必要性を感じていないのに、情報はどういう方向に活用したらいいの??
こんな状況です。そのため生産者たちは自分の効率化のために情報を使っています。
効率化が図られるというメリットを感じるかもしれません。ですが、ワークフローを見直して今まで使わなかった情報を連携した結果、無駄が少し減っただけですよね。
これがBIMだというのであれば、建築業界のデジタルトランスフォーメーションは達成されないままでしょう。建築自体の価値は何も変わってないのですから。
標準化や自動化を進めた先の建築はいまの建築と違う価値を持ちますか?
建築業界の大きな変化は【どのような価値を生み出すかという情報化の目的】が見つかるかどうかにかかっていると思います。
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